夏海(15)~ポケットに入れてるだけの電話が勝手に電話することってあるよねー

キシル様のカメラ

あたしの背中には、翼がある。

そうとしか思えない身軽さで、あたしはトんだ。

男の両肩に太ももを置き、顔を挟み込む。

勢いに押され、一瞬、男が怯んだ。

ようは、タイミング&不意打ち!!

あたしは天使もとろけそうな甘い笑みを見せる。

視線の先は……白く柔らかな太ももの間にいる浅黒く脂ぎった男の顔。

股間にかかる男の息が、三度ほど上がった。

童貞かよ?

上からは、極上の笑みを注がれ、分厚い唇の前には女の柔らかな部分、左右には、滑らかな感触。

いかせてあげる。

金メダルスケーターも真っ青な勢いと完璧さで、あたしは、背をのけぞらせた。

重力はあたしの味方。

がっちりと男の顔をはさみ込んだまま、勢いをつける。

「うほっ!」

男のくぐもった声が、神経を苛立たせる。

ガラスのテーブルに足をのっけて熱唱中の秋と、逆さまの世界で目があった。

あたしの髪が、吹雪のように光にきらめく。

男の靴底が、地面とさよならを告げ、体が、前にのめりこんだ。


浮遊感……ジェットコースターで回っているような、フリーホールで落ちるような。

今だ!!全身のバネを使う。筋肉が歓喜の声をあげる。

軍隊に入隊したこともあるあたしを、舐めんなよ!

通販DVDのキャンプだけど……。

華麗に後方に回転するあたしに巻き上げられて、男の体は宙を舞った。

一瞬の静寂の後、激しい音。

脳天から床に叩きつけられ、男は沈黙し、ひれ伏していた。

あたしはというと……

ガラスのテーブルに腰掛け、秋の足にもたれながら、男の背中を踏みつけていた。

地獄へいってらっしゃ~い!

秋の歌が、レクイエムに聞こえた。

大音量だけど……。

まぁ、いいとしよう。
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