夏海(15)~ポケットに入れてるだけの電話が勝手に電話することってあるよねー

キシル様(another world_edition)

いやぁ~世の中、何が起こるか分かんないね。

日常は、あっけなく崩れ去るんだよね。

俺の場合、新日本プロレスのシャツを着た男がきっかけ。

へぇ~変わった服だなぁ。

何て、俺は呑気に見てたんだけど、同時に始まった大音響。

いや、カラオケルームだから、ある程度の音量には耐えられるんだけど……。

良く来る秋という男の歌声は、何回聞いても慣れない。

テロか?と勘違いしそうな音程に、俺の仲間は砕け散りました。

俺の仲間が砕け散ったのを見つめていた女――夏海というらしい。

夏海は、俺がパンツを見ているということも気にせず、大股で男に飛び掛った。

俺と俺の仲間の遺体を踏みつけて。

おい!

俺が怒る隙もなく、夏海は白い足を男の両肩に乗せると、キュッと首を絞めあげた。

カラオケルームでは、めったに見られる光景じゃない。

立ち尽くしている男の顔の前に、女の股間があるんだぜ?

新手のカラオケスタイルか??

傍観していた俺は、次の瞬間、夏美の顔を写していた。
上体を勢い良く反らし、ホラー映画の幽霊みたいに髪を振り乱した夏海。

ええー?アクロバティック??

夏海は、足で男の顔をはさんだまま、後方に回転してくる。

つまり、俺に向かって……。

前にのめり込む男の体が、宙に浮く。

ちょっと、ちょっと、近い!!

映画のコマ送りのように、プロレスの文字が近づいて……消えた。

ん?

すぐ前には夏美が俺に背をむけて、床に屈んでいる。

あれ?プロレス男は?

それが、俺の最後でした。


プロレス男は、ガラスのテーブルに脳天から叩きつけられ、気を失っていた。




カラオケ屋さんの被害。

秋の歌声で割れたガラスのコップ。

フランケンシュタイナーの下敷きになったガラスのテーブル。
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