ウソ★スキ
なんだか落ち着かなくて、

何度も何度も荷物の出し入れを繰り返して、

ようやくお風呂に入った時には、もう日が変わってしまっていた。


脱衣所で濡れた体を拭きながら、洗面所の大きなミラーに自分の裸を映す。


……あたし、おかしいところないかな?


チビでガリガリで、全然色気のない貧相な身体。

これを明日、先輩に見られるんだよね……。


あたしは鏡に視線を向けたまま、自分の腰に手をやった。

今ではもう分からなくなってしまったけれど、そこにかつてあったのは、泣きながら刻んだ「ソラ」っていう痛々しい傷。

それはよく見れば、ほんの少しだけ、しかも部分的に、白い傷跡になっている。

だけどそれが元々どんな傷だったのかなんて、それを実際に見た私とソラ以外には絶対に分かるわけがなくて……。


……この傷は、まるであたしの気持ちみたいだ。

傷が消えるまでは、誰とも恋なんてできないと思っていたけど。



うん。
もう、大丈夫。

あたしはやっと、ソラから卒業できるんだ──。



鏡の自分をじっと見つめていると、お風呂あがりの身体から出る湯気で鏡はだんだん曇っていって、

そんな鏡の向こうに、私の姿はぼやけて消えてしまった。








< 233 / 667 >

この作品をシェア

pagetop