ウソ★スキ
先輩に背中を向けると、ずっと我慢していた涙が頬を伝った。

トイレへ向かって歩きながらぎゅっと強く瞬きをすると、涙はその一瞬だけ止まる。


だけど……

「もう……帰りたいよぉ……」

そんな愚痴を零した途端、あたしの瞳は再び涙で溢れた。




泣きながら駆け込んだトイレは、入り口がひとつ。

ドアを開けると、目の前には洗面台。

そしてその右手には男子用、左手には女性用の個室の案内プレートが貼られた扉があって。



「……どうして?」



入り口に鍵は掛かっていなかった。

だから、誰もいないと思って飛び込んだトイレ。


だけど、洗面台の前には人が立っていた。


──鏡に映るその人物と、鏡越しに目が合う。



「……どうして、ここにいるの……?」



そこに立っていたのは。



今、一番会いたくない相手──ソラだった。



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