ウソ★スキ
「分かりますか? トイレはそこの突き当たりで、電気は……」

「うん。知ってるから大丈夫ー」

先輩は迷うことなくトイレのスイッチに手を伸ばした。


「美夕ちゃん、なんか、ごめんねー」

間延びした口調であたしを振り返りながら、トイレに消えていく先輩。

「はいはい!」

先輩を適当にあしらった後、あたしは部屋に戻って、先輩の上着をハンガーに掛けた。

部屋にはあっという間にお酒とタバコの臭いが広がったけれど、ここは1Kのアパート。

他に避難できる部屋なんてない。

イヤだけど、今日はここで寝ないといけないのか……。


諦めの溜息を吐きながら、あたしは次に、カバンと一緒に手渡された一通の封筒に視線を移した。


封筒の色は、清潔感ある鮮やかなブルー。

少し大きめの、ちょっと高級そうなその封筒の下部分には、そういうことに縁のないあたしでもよく知っている、有名な結婚式場のロゴがプリントされていた。


「あぁ……そういうことか……」

それで酔ってるんだ。

先輩がうちに来た理由が分かって、あたしは思わず笑ってしまった。




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