【戦国恋物語】出会いは突然風のように…
「尼さまが助けてくれたのか?」



やっとのことで声を絞り出すと、わたしは疲れて息をついた。



死ねはしないが、弱ってはいるらしい。


そんなわたしに尼さまは、見たこともないような慈悲深い笑みを浮かべた。


「そなたを連れて来たのは、ここで下働きをしている者ですよ。元気になってから礼を言うといい」



(元気になって……)



どうやら尼さまは、本気でわたしを生かすつもりらしい。



(こんなボロクズのようなわたしを?)



こんなわたしを生かして、いったい何の益があるというのか。


わたしには尼さまがもうろくしているとしか思えなかった。



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