すると。

「えっ?」

本官はその場に立ち尽くしていました。

犯人は既に確保され、テープでがんじ絡めにされているトネさんをほどいてあげている先輩が居たのです。

「ああ三塚。犯人確保は14時まるふた分だ」

中島先輩は呼吸を荒げることもなく言ってのけました。

「お前にはホシの連行を頼むわ。おっと痛かったか? ごめんなトネさん」

「は、はいっ。申し訳ありません」

「やっぱり中島さんは頼りになるねえ。はい、飴ちゃん」

自由の身になったトネさんが結った髪の中から飴を取り出しています。

これが、現場で鍛え上げられた力なのだと思い知らされた瞬間でした。本官の段位や大会の賞状は『絵に書いた餅』でしかなかったのです。


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