W・ブラッティⅡ
「おい。麻耶。起きているんだろ?」


 悠介は麻耶がいるベッドの近くで麻耶に声をかけるが、全く反応がない。


 悠介は舌打ちをした後、強引に布団をひっぺがした。まさかの行動に麻耶は驚いた顔をした。


「ちょっと何!?随分乱暴なことしてくれるわね!」


「呼んでいるのに反応しないお前が悪い」


 それを聞いた麻耶はプイと悠介に背を向けた。


「慎次はお前と仲直りがしたいと言っている。今まで通りの関係でいたいと言っている」


「……」


「……やっぱり俺が言うより慎次の方が良いよな」


 そう言うと悠介は目をつむり慎次の人格が現れた。


「ありがとう」


 そう言うと麻耶が振り返る。少し眼には涙が浮かんでいる。


「慎次。あなた仲直りがしたいって言っていたよね?」


 慎次が頷いた。すると麻耶がふっと顔を綻ばせて、


「じゃあ。今度から隠し事なんかしないで。そしたら仲直りしてあげる」


「うん。ありがとう」


 二人は笑顔で約束を交わした。


 ちょうどその時、玲菜と良太が部屋に戻ってきた。二人は慎次たちを見て、


「あーちょっといい雰囲気だからもう少しそうしてなさい。私たちはもう少し外をうろついているから」


 そういって戻ろうした二人を麻耶がベッドから降りて止めようとする。


「別にそんな雰囲気じゃないから!ラブラブなのはお父さんたちでしょ!」


 その光景を見て慎次は笑顔で見ていた。自分がいる場所はあったかい場所だ。常に陽だまりの中で生きているんだと実感した。


 ――結局俺はただの当て馬だったってわけね。ちょっとがっかりだぜ


『ううん。君のおかげで元に戻ったんだ。ありがとう』


 ――もうこういうことで俺を使わないようにな。でも……


『でも?』


 ――お前は俺と出会ったころよりずっと成長した。俺は感心したぜ


 列車は着実に目的地の北海道を目指し動いている。
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