小悪魔男子



大人になれば



失った物も返ってくるんじゃないかと思ったんだ。




だから 俺は



さなちゃんの前でしか笑わない。



自分の全てを見せるのは彼女の前だけで良い。


そう決めたんだ。




表情を変えない事が大人なんだと信じていた。





そして夏休みも明け、学校が始まる。


この日をどんなに待ち望んでいた事か。


少しでも早く家から遠ざかりたくて、毎日7時に家を出た。



勿論、一番に教室に着く。



暇だったけど、家に居るよりマシだった。



土日は、華耶も休みだったけれど


顔を合わせない為に、同級生の誰かの家に 朝からお邪魔して

華耶がいつも出掛ける6時に家に帰ってきていた。



けど



それももう疲れてきて




もう、どうでもいい と思うようになってきた ある日の事だった。







「大和。学校祭に来なさい」



「…何で」



休みのクセに、珍しく家に居る華耶にそう言われた。





< 263 / 346 >

この作品をシェア

pagetop