心が先か命が先か
ソメイヨシノのさくらが中学生の笑顔を引き立てていた。
小学校からの仲良しの加奈子と亜々は入学式のあと、下駄箱に集合する約束をしていた。
「加奈子、こっちだよ」
亜々は、さっきの元気な声とは変わって淋しそうに加奈子にいった。
「ね、亜々、私たちクラスが違っても、部活が違っても、何でも話せる親友でいようね」
と加奈子は亜々の目に笑顔をうつして約束をした。
加奈子は、運動神経のよさもあって、バスケ部に入部した。
亜々は、習い事の書道を辞めたくはなかった為、特に部活には、入部しなかった。
加奈子が入部した部活はとても厳しくて、週に4回と頻繁に加奈子から亜々に電話があった。
部活のいじめや、上下関係の悩みで意気消沈していた加奈子は、1時間、2時間と永遠に相談しながら愚痴っていた。
そして、加奈子は、手足が長く、すば抜けて運動神経がいいことから、1年生なのに選手に選ばれてからは、加奈子のイジメがエスカレートしていった。
加奈子は苦しそうだった。
ある日、亜々は人肌脱いで、加奈子をイジメてる先輩に、文句を言うために2年生のクラスに行ったりもした。
「あね子、美人な顔でムカツク」
と加奈子の事をいっていた。
「イジメをやめて下さい」
といった瞬間、ビンタが亜々にとんできた。
亜々は泣きながら、加奈子のクラスに飛び込んだ。
顧問の先生にも、いじめについて、いいつけにいったり、その先輩の家も調べて文句を親にいったりした。
加奈子と亜々は、決断力がつよまったころ、よくいたずらもしていた。
イジメをする先輩の家の犬小屋にかいてある「太郎」を「浦島」と文字の前に付けたして書いては、次の日に消して、「一」と書いては、次の日に消して、「北風小僧のかん」と書いてはけして、全力で走って逃げていた。日の丸弁当に海苔で、「イジメ反対派」なんて書いて、イジメをする先輩の下駄箱にいれたりもした。
イジメはなくならなかったものの、二人の行動は無駄にはなっていなかった。
亜々にとって加奈子の悩みは、自分の悩みでもあり、加奈子の喜びは、亜々の喜びでもあった。
亜々は、加奈子に、授業中に手紙をよくかいていた。
「私達の青春は、イジメから勝つ事から始まる」と題して、ノートいっぱいのイラストを描いたり、「今週の宇宙からのお告げの言葉」と、題して、
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