a☆u★c〜全部請け負う部活動!!〜





体育館では、先に椅子を持って整列し、卒業生の入場を待つ在校生たちが、何処か落ち着き無く騒ついており、それを鎮める生徒指導部長の声が響いていた。


『卒業生の皆さんが入場します。吹奏楽部の演奏に合わせて、拍手でお迎えしましょう』


報道局の声のあとに、吹奏楽部が演奏を始める。

しっとりとしたイエスタデイ・ワンスモアが体育館内に流れ、先程の騒ついた雰囲気は跡形もなく消え、誰もが静かに、ただ機械的に手を叩き続けている。

ぞろぞろと入場してくる三年生を眺めながら、明衣は小さく欠伸を噛み殺した。

去年もそうだったが、こうした式典は眠くなるから苦手だ。

卒業証書の授与は、生徒数が多いというのに全員にされるため、在校生からしてみればかなりの苦痛であるし、卒業生も貰った者から順に居眠りを始めたりしている。

そのBGMに、ピアノでバラードソングを弾く音楽科教師も居るものだから、余計に睡魔を呼び寄せるのだ。


(今年は蘭先輩の晴れ姿だし……蘭先輩までは起きてないと…)


明衣は目を擦りながら決心をする。心配しなくとも、五月女の目は爛々に輝いていることだろう。

そして、魔の卒業証書授与が始まった。






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