Two Strange InterestS
 夕方から降り始めた雨が、少しだけ、激しくなっている気がする。

 現在時刻は午後10時過ぎ、いつもの玄関前。今日はお互い夕方からアルバイトで……そして、明日が祝日なのだから、思う存分夜に(個々人の時間を)楽しもう、そんなノリで話がまとまったのは、3日ほど前になるだろうか。

 彼が、私がやりたいと思っていたソフトを手に入れてくれて……でも、なぜだかこんなときに時間的な都合がつけられなくて、まだ第2章までしか進められず、すれ違ったまま、今日までお預けの生殺し。授業にもバイトにも集中できなかった自分に呆れるしかないだろう。

 そして、本日、バイトを終えて――私は雑誌で見たときから狙っていた同級生の風華ちゃんを攻略できると、ようやく彼女に逢えると、そりゃーもう鼻歌交じりで手土産まで持ってやって来たというのに。

 ロングヘアーでロリボイス、でも出るところはしっかり出ているモデル体型、しっかり者だけどいたずら好き、その性格と体で主人公を骨抜きにしていく様が、楽しみでしょうがないというのに。
 部屋の主がいなければ、どうにもならないじゃないか。

 勿論私は合鍵なんか持っていない。10分ほど夜空を見上げつつ新谷氏にメールを送ると、「もうすぐ帰る」という簡素な一文が戻ってきた。
 別に風華ちゃんは逃げないんだけど……でも、これを励みに今日の今まで頑張ってきたんだ。ちなみに私のバイト先はレンタルショップなんだけど、返却されたDVDを並べながらため息をついた日々にサヨナラなんだからっ!

 期待に胸を膨らませつつも、風が吹きすさぶココは4階。新谷氏の帰りが5分後なのか30分後なのか分からないし、何より体が冷えてしまったので近くのコンビニで時間を潰そうという結論に達した私は、冷えた体を一度抱えてため息をつく。

 かすかに白い息が、暗い夜空に溶けた。
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