放浪カモメ

ホーム


鴨居が本人に全く自覚のない運命の出会いを果たした頃。


大した人通りもない商店街に、似付かわしくないロックな音が響きわたった。

「もしもし、杉宮ですけど。」

それは杉宮の携帯の着信音だったようで、ぽつぽつと振り返った通行人が、冷ややかな視線を送りながらまた各々の買い物へと戻っていく。

「もしもし、オレやけど。」

「悠太か……どうした?」

聞きなれた大阪弁。電話越しに分かる明るさとその表情。

「いやぁそろそろ、おうた頃かなぁって。」

杉宮には誰が誰に会うのか全く分からない。

「何の話だよそれ?」

「へっ?まだおうてへんの?まさか迷ってるんやないやろなぁ……」

ますます分からなくなり混乱する杉宮に気付き、悠太が慌てて事情を説明をする。

「姉貴がな、要くんに会いに行ってんやけど。そろそろ東京に着く頃やと思うねん。」

「悠美が!?」



< 182 / 328 >

この作品をシェア

pagetop