放浪カモメ
いつの間にか、鳴いていた虫達の声がなくなっているのに鴨居は気付いた。

寝静まった世界。

怖いくらいに静かで、眠っているのであろうメグの吐息すら聞こえてくるんじゃないだろうか?

そう鴨居が思った瞬間だった。

ガサガサッ。という音と共にメグの叫び声が聞こえた。

「きゃーーーっ。」


鴨居はくるまっていたボロボロの布を振り飛ばすと、一目散にメグの居る反対側へと走っていった。

「メグちゃん大丈夫!?」

そこには怪我をしたのだろうか足元を押さえて座り込んでしまっているメグ。

そして、そんなメグを取り囲む様にして威嚇をしている野犬の群れがいた。

鴨居はメグを背に隠す様にして野犬の前に立ち塞がった。

グルルルル。と物凄い形相で唸る野犬に、正直なところ鴨居は尻込みしていた。

それでも、こうして果敢にも立ち向かおうと思えるのは、背中で体を震わせながら泣いている少女を守りたいと思うから、ただそれだけだった。

「うわぁぁぁぁあっ!!」

鴨居は側にあった決して太くも長くもない木の棒を、強引に振り回しながら野犬の群れに突っ込んだ。

怯(ひる)むことなく向かってくる野犬を、鴨居は可哀相と思いながらも棒で叩き追い払った。



「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ………。」

肩を切らし、しばらく鴨居は茫然としていた。

鴨居は自分が汗をかいていたのに気付くのと同時に、全身の力が抜けていくのを感じた。

そうしてようやく、メグのもとへと駆け寄った。
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