放浪カモメ

後悔

居酒屋に行って杉宮の話を聞いたあの日から、鴨居と杉宮は少し距離を置くようになってしまっていた。





「…あんの糞餓鬼。何が、何かあったら言いますよ。だ…全然言いにこねぇじゃねぇか!!」

杉宮の口から思わず、そんな言葉があふれ出る。

「そこ杉宮煩い!寝言は寝て言え!!ってか人の仕事中に寝んな!!!」

日本史の先生からゲキと共に、杉宮の眉間目がけてチョークが飛んだ。

杉宮は授業中だということを忘れ、鴨居への憤りを叫んでしまっていたのだ。

「痛ぇなジジイ。今時チョーク投げって古臭ぇんだよ!!あれか?日本史の先生ってのは、日本の偉人、偉業だけでなく、チョーク投げみたいなどうでも良いことも語り継ごうってのか、ああ!?」

「ちょっ…要。どうしたんだよ止めろって。」

隣に座っていた学生が止めに入ったのだがもう遅かった。

「杉宮、今すぐ教室から出ていけ……二度とオレの講義に顔を出すな!!」

杉宮は乱暴に荷物を鞄に詰め込むと教室から去っていった。




教室から出て、むしゃくしゃとした気分を晴らせないまま中庭を歩いていると鴨居とすれ違う。

いつもならどちらからともなく挨拶を交わし、冗談を言い合い、そして笑っていたはずだったのに。

この日ふたりは目を合わすことすらせずにすれ違っていくだけだった。



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