共鳴り
≪第三章≫

レナちゃん

理乃の態度はあれから相変わらずで、大して好きそうでもない男と付き合ったり別れたりを繰り返していた。


それがまるで俺のことを振り払うような行為にも見えて、余計に痛々しくなる。


季節は秋から冬に変わる狭間で、少しばかり寒くなった頃やった。


清人が珍しく、らしくないことを言い出したんや。



「あぁ俺、これからちょっと寄るとこあるから。」


「どこ行くん?」


「ん、キャバクラ。」


「キャバ?!」


キャバの女なんて、俺らの恰好のカモや。


昼職の普通の女よりずっと、キャバの女の方が早く風俗に落ちてくれるから。


今度はそんな女を狙ってるんや、と思い、俺はにやりと口元を緩めた。



「なぁ、俺も行って良い?」


「…ダメって言っても来るんだろ?」


どうせ家に帰ってもろくでもない状態やし、飲みたいし、何より清人がどういうのを狙ってるのかも、単純に見てみたかった。


諦めたような顔してる彼と共に、俺は“アイズ”という店に足を運んだ。


清人は迷わずひとりの女に指名を入れる。



「ホントにジルが来るなんて思わなかった!」


驚いたように笑っていたのが、レナちゃんやった。


が、思わず俺は、眉を寄せる。


いつも清人は、女の前では今思いついたとばかりの偽名を使うくせに、この子には“ジル”と名乗っていたこと。


何よりアイツ、レナちゃんの前で柔らかく笑っててん。


どの女にも、明らかに作ったような笑顔しか向けないヤツが、少しの嬉しさと、そして悲しみを含むような目で、あの子を見ていた。


俺はゾッとした。

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