共鳴り

面影探して

理乃はあの後、清人の胸の中でただ泣き続け、そのまま眠りに落ちたらしい。


あれ以来、俺は自分の家になんか帰ってないし、清人もまた、そんな俺が住み着いた自分の家には寄り付こうともしなかった。


失ったものが大きくて、なのに考えれば考えるほどもっと大きくなって感じてしまい、始末に負えない。


俺も清人もそんな自分自身と必死で戦いながら、表面上は何事もなかったかのように繰り返す毎日。


理乃に触れた記憶はもう、体には残されておらず、痛みを帯びて残る残骸だけ。


そんなことが、ただ悲しかった。



「…お前ら、揃って覇気のねぇ顔しやがってよぉ。」


焼き肉屋で、飯も食わずに不貞腐れて俯くガキのような俺らを、嶋さんがため息混じりに睨んでくる。


食ってんのは俺だけかよ、飯が不味くなる、折角食わせてやるっつってんのに、と繰り返される文句の数々。


聞き流していると、今度はあからさまに舌打ちを吐き捨てられた。



「俺が嫌いなら嫌いで良いけどよぉ、嘘でも虚勢ぐらい張る素振り見せろよ。」


そんなことさえ億劫で、それでも俺らは何ひとつ言葉にしなかった。


口は悪いが、嶋さんなりに俺らを心配して、様子を探ろうとしてるんやとは思う。


こういった時の彼は、いつも気を使っているように見えるのだ。


元を辿れば誰の所為で、って感じやけど。

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