共鳴り

花穂ちゃん

俺らの人生を語る上で外せない人間って何人か居るけど、彼女もそのうちのひとりやろう。


清人と俺はずっと一緒やったし、だからなのか、アイツに面と向かって近づいてくる女っておらんかった。


そう、花穂ちゃん以外には。


多分花穂ちゃんがおったからこそ、余計清人の周りって女っ気がなくて、俺は勘違いしてたんやろうけど。




花穂ちゃん。
花穂ちん、花穂っち。


そんな風に呼んでたわ。



彼女は清人が住む高級マンションの、お隣さんやった。


清人の何番目かの父親、つまりは妹であるアユの親父やな、めっちゃ金持ちやってん。


清人曰く、「だから奈緒子さんにしては珍しく、長続きしてたんだろうなぁ。」とのこと。


まぁ、そんな話は置いといて、えぇ子やったよ。


めちゃくちゃ可愛いってわけでもないけど、ちっちゃくて、くるくる表情が変わって、見てて面白かった。


清人も花穂ちゃんの前やと、何だかんだ文句言いながらも言うこと聞く感じ。


どこがクールやねん、ってのは、そういうのもあったからかもしれん。


アホやから、尻に敷かれてる感じやったで。


清人とずっと一緒におったら、必然的にも花穂ちゃんと仲良くなって、たまに3人でおったりもした。


花穂ちゃんは理乃と同じく俺のこと、りっくん、って言うねん。


「陸くん、って言いにくいよ。」って言われたん覚えてる。



「りっくん、何でそんなに馬鹿なの?」


「キヨちゃんはいっつも怖い顔だよねぇ。」


そういう子やった。


俺らのどっちもに同じ態度やし、クラスでも人気やったわ。


明るい子やったしな、俺も清人ももしかしたら、無意識のうちに救われてた部分ってあったんかもしれん。

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