国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい
潮の香りを含んだ南風が、立ち並ぶ家々の間を吹き抜けて、一人の少年の鼻腔をくすぐった。
ウェスタの隣国、チェルシーの港町は、朝日が昇る頃がもっとも活発に賑わう。
漁師の多いこの街では、暗いうちから舟をこぎ、仕事を終えた者たちで、市場が活気付くからだ。
しかし、昼近い今は、ちょうど休憩の時間で、人影もまばらだ。
疲れを知らない子供たちだけが、飽きもせず、家の外で、きゃっ、きゃっと声をたてる。
石蹴りをして遊んでいた数人の少年に、息を切らせて近づいてきた男が、声をかけた。
「坊やたち、レア様という薬師様がいらっしゃるおうちを、教えてくれ!確か、このへんだろう?」
肩で息をしている男を見て、黒髪の少年が、声を上げた。
「僕、知ってるよ!こっち!」
少年は、すぐ近くの家の扉を乱暴に開いて、大またで中へと入っていった。