国王陛下は純潔乙女を独占愛で染め上げたい

潮の香りを含んだ南風が、立ち並ぶ家々の間を吹き抜けて、一人の少年の鼻腔をくすぐった。

ウェスタの隣国、チェルシーの港町は、朝日が昇る頃がもっとも活発に賑わう。

漁師の多いこの街では、暗いうちから舟をこぎ、仕事を終えた者たちで、市場が活気付くからだ。


しかし、昼近い今は、ちょうど休憩の時間で、人影もまばらだ。

疲れを知らない子供たちだけが、飽きもせず、家の外で、きゃっ、きゃっと声をたてる。


石蹴りをして遊んでいた数人の少年に、息を切らせて近づいてきた男が、声をかけた。


「坊やたち、レア様という薬師様がいらっしゃるおうちを、教えてくれ!確か、このへんだろう?」


肩で息をしている男を見て、黒髪の少年が、声を上げた。


「僕、知ってるよ!こっち!」


少年は、すぐ近くの家の扉を乱暴に開いて、大またで中へと入っていった。



< 463 / 522 >

この作品をシェア

pagetop