メランコリック症候群
「もうすぐチャイムが鳴るね」

もうそんな時間なのか。時計を見ると残り五分足らずで5時限目の終わりを告げるチャイムがなる時間だ。

ちょうど2個残ったシュークリームを持って帰りたいと言うと、彼女は大笑いをしてタッパーに詰めてくれた。結局毎日放課後にやってくる美月と狂い甘党の宏の分だ。

「甘いもの、そんなに好きだったんだ?」

「俺の分じゃありませんよ」

笑い続ける彼女を半ば呆れながら眺めていると、じゃあこれがキミの分ね、と言いながらラングドシャもおまけで包んでシュークリームを入れタッパーと一緒に渡してくれた。

「ありがとうございます」

「いえいえ。受験生の原動力はあまーいものなんだら、ばんばん食べて勉強しなさいね」

前に、同じセリフを宏からも聞いた気がする。カップやポットをシンクに移して、彼女は窓の近くでカーネーションを見ていた俺の元に近づいてきた。

「じゃあ、おさらいね。」

「は?」

可憐に咲いているライトピンクバーバラを見つめながら、次はカーネーションを買ってきて飾ろうかなどと考えていた俺は、彼女が何を言っているのかすぐに理解できなかった。

「これからのキミの課題。やることリストのおさらい。まず第一に、毎日寝る前に紙に明日はこんな自分でいたいっていうのを書いて、制服の胸ポケットに入れること。第二に、毎日お風呂上がりに鏡の前で笑顔の練習をすること」

「……わかりました」

それが本当に効果があるのかは知らないが、やらないよりはましだろう。俺は素直に頷いた。

「じゃあ、また来てね」

部屋のドアの近くまで、カウンセリング室を出た俺を見送りに来た。

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