転んだら死神が微笑んだ
ガタッ

後ろで椅子の動く音がした。




太った男「あっ…、ドリンクあと一杯飲も。」

男の人が小さな声でそう言った後、氷の鳴る音がして、店員さんの声が聞こえた。


店員「ありがとうございました〜!」


女将さん「まあ、このチーズケーキ、クリーミーでおいしいわ〜。」

女将さんは相変わらずというか、状況の変化に一切反応しない。

女将さん「あかりちゃんも後で食べるといいわよ。」

それから、わたしたちはケーキバイキングを楽しんでいた。

何種類ものケーキを口に運んでは、たわいもない話を繰り返し、まわりのお客さんと何一つ変わりなかった。

あかり「あ、おいしい。」

女将さん「え?あなた、それさっき食べてたじゃない。よっぽど気にいったのね。」

確かに、さっき食べてたんだんだけど…。

なんでだろ?

おいしい…。

それが、ただ単に緊張感から解き放たれたからだということに、わたしは気づいていなかった。
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