Leave a prove
「大丈夫か?」

「おう。余裕だ」

ユニフォームのまま俺の後ろに現れた直輝は、そう言いながら後ろから俺の体を支えてくれた。そんな直輝の後ろには友里の姿もある。

「神崎君の荷物は後で私が家に持ってってあげるよ。だから荷物の心配はしなく大丈夫よ」

「そうだった…すっかり忘れてたよ」

そう言えば俺はいま手ぶらの状態だった。それなりの量の荷物が置きっぱなしになっているのが予想される。

「自転車は俺に任せろ。責任もって菊池先生の車に押し込んどいてやるからよ」

「その責任の取り方はどうなんだ?結局は菊池先生頼みじゃねぇかよ」

直輝は豪快に笑い飛ばしながら俺を保健の先生の車に押し込んだ。それなりに大雑把な方法で…。

「ちょっと直輝っ!神崎君は怪我人なんだから、もうすこし丁寧に出来ないの?」

「わりぃ。でもまぁ怪我してる足だけは気にしてたから大丈夫だろ」

直輝らしいと言えばらしい。実際俺の脚には何も負担はかからなかった。ていうか何もしなくても痛いので、今更多少の衝撃を受けたところでって感じだ。

「ほんとガサツなんだから。大丈夫だった?」

「大丈夫だよ。余裕余裕…」

適当に返事を返しながら俺は座席に座りこみ、一応シートベルトを締める。確か後部座席でもシートベルトを締めないといけなかた気がしたから。

兎にも角にもこれで病院に行く準備は整った。

俺たちがいつも通りの様な会話をしていると、後ろの方で黙って事の成り行きを見守っていた真紀が、俺に切なそうな視線を送っている事に気づいた。

「診察が終わったら連絡するよ。気をつけて帰れよ真紀…」

「…うん。絶対連絡してよね」

さっきまで付いてくると言っていた真紀だったが、そう言うと俺に向かって手を振ってきた。俺はそれに手を振り返した後、保健の先生の運転で病院に向かう事になった。
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