イジワルな恋人


【亮SIDE】


「あ、亮……、あたし……っ」

「悪ぃ。……やっぱいい」

「……え?」


奈緒の言葉の途中でそう言って立ち上がった。

不思議そうにしている奈緒から、目を逸らす。


「男は探しとくから安心しろ」


それだけ言い残して、階段に向かう。


「……うん」


背中で、奈緒の頷く声を聞いた。


奈緒の言葉を……、奈緒の気持ちを聞くのが嫌だった。


……怖かった。


自分から聞いたのに、情けねぇな……。


でも、もしも……、

もしも奈緒の口から、中澤が好きだって聞いたら。



さすがに、俺だってもう傍にはいられない。


他の男を想う奈緒の傍になんて、いられない。



あいつが、好きだからこそ……気持ちを聞くのが怖い。



奈緒を屋上に残したまま、振り向きたくなる気持ちを抑えて、ドアを閉めた。





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