イジワルな恋人
「亮、今日バイトは?」
「おまえ休みだろ?」
学校帰りの車の中で亮に聞くと、逆に聞かれる。
「うん。あたしはお休みだけど」
「じゃあ俺も休み」
意味の分からない言葉に首を傾げて聞き返す。
「なんであたしが休みだと亮も休みなの?」
「北村に話つけてもらったんだよ。バイトは気が向いた時でればいいって」
当たり前のように話す亮に、あたしは顔をしかめる。
「そもそも、俺、金に困ってる訳じゃねぇしな。
おまえがバイトん時だけでることにした」
呆れて声も出せないでいると、運転席の北村さんが補足する。
「実はあの辺りの土地の所有者は旦那様なんです。
そのことを告げたうえで、亮様のバイトの件の話をしたので……」
「……そうなんですか」
……北村さんて、優しい顔して意外とシビアだな。
なんかみんな大人っていうか……、使い分けてるものなのかな。
佐伯さんも北村さんも、違う顔を持ってるっていうか……。
二人を並べたら北村さんにすごく失礼だけど。
そんな事を考えながら、なんとなく隣の亮を見あげる。
「……ん?」
視線に気付いた亮が優しく笑うから、胸が少し苦しくなった。
……亮も、あたしには見せない顔があるのかな。
他の誰かにしか見せない顔とか……。
……全部知りたいと思うのは、あたしのわがままかな。