イジワルな恋人


実際、香奈ちゃんは仕事熱心で店長も感心しているし、バレなければ何の問題もない。

それに香奈ちゃんがバレるような軽率な事をするとも思えないし。



「……水谷さん、店長が休憩入るように言ってますよ」


氷の入った袋を捨てようと従業員室に向かってる途中、亮に呼び止められた。

亮の声で、『水谷さん』なんて呼ばれると……未だに変な緊張が走ってむずがゆい。


「……わかりました」


ドキドキしてる胸に気付かれないように、顔を合わさずに返事をした。


従業員室の流し台に氷を捨てて時計を見る。


17時30分。

休憩時間は20分、お昼休みは1時間、それがこのお店の決まり。

その20分間、あたしはだいたい無造作に置いてある雑誌を眺めて過ごしたりしてる。

店頭に並ばなくなった少し古い雑誌。

手にとった雑誌は、『お花見特集』と大きく表紙に書かれていた。


……もう6月も終わるのに。


あまり興味をひく内容でもなくて、パラパラとページをめくっていると、ノックなしにドアが開いた。

少しびっくりしながら、ドアに目を向けると……。


「あれ……?」


ドアを勢いよく閉める亮の姿が目に入った。


「あの女……、まじ殴りてぇ」


かなり苛立った様子の亮の言葉が、誰を指しているのか……。

すぐに答えの分かって、苦笑いを浮かべて亮を見る。


「亮も休憩? とりあえず座りなよ。コーヒー入れてあげる」


亮が不機嫌そうに椅子にドカッと腰掛ける。


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