イジワルな恋人
亮の家を飛び出したあたしの腕を掴んだのは、北村さんだった。
「……送ります」
笑顔でそれだけ言うと、玄関前まで車を回してくれた。
「……すみません」
一言だけ告げて、北村さんの運転する車に揺られた。
いつの間にか梅雨入りしていた空からは、細かい雨が落ちてきていた。
……大切にされてるのはわかってる。
あたしに言えないでいる事も、きっと大した事じゃない。
亮は、あたしを裏切ったりしない。
……わかってるのに。
なんで、こんなに不安なんだろう……。
……~♪
無言の車内にケータイの着信音が響いて、鞄の中からケータイを取り出す。
『あ、水谷?』
一瞬、亮かと期待したけど、ディスプレイに表示されたのは、『バイト・ネットカフェ』。
電話の向こうからは、店長の声が聞こえた。
「……はい」
『悪いんだけど、これからバイト出られない? 俺、シフト組み間違えたみたいで今一人足りないんだ。無理?』
店長の電話の後ろで、賑やかな声が聞こえた。
普通なら静かな店内が賑わってるって事は、受付待ちの人がいるって事……?
……混んでるのかな。