イジワルな恋人
「うち寄ってけよ」
「……あ、うん」
少しためらいながらうなづく。
亮は邪魔じゃないって言うけど……試験まで後1ヵ月だよね?
本当に大丈夫なのかな……。
そんな意味をこめて送った視線に気付いた亮が、呆れたように口を開く。
「……また邪魔とか言ったらここで襲うからな」
「……っ!」
亮の言葉に、あたしは赤くなって……笑みをこぼした。
部屋につくと、机の上に積み上げられた20冊くらいの参考書と問題集が目に入った。
いつもなら何も置いてない机の上が、参考書で埋め尽くされていて、その周りには筆記用具が散乱していた。
「こんなにするの……?」
驚きから言ったあたしの問いに、亮がベットに腰を下ろしながら答える。
「……それはもう終わったやつ」
「え?!」
一冊を手にとってページをめくる。
亮の言葉通り、中は全て答えが埋まっていて……。
赤いペンで訂正までしてあった。
「……すごい」
ペラペラめくっていた手が……、途中で止まる。
そういえば、亮の字って初めて見る。
……あんまり上手じゃないかも。やっぱり亮も普通の男の子なんだな。
「ねぇ、亮……」
笑いたくなるのを我慢しながら振り向いたけど……途中で言葉を止めた。
そして静かにベットに近づく。
……疲れてるんだね。
それなら、会いに来てくれなくてもよかったのに……。
初めて見る亮の寝顔に、自然と微笑が浮かぶ。