イジワルな恋人
「まじでいいの? 超ラッキー」
『斎藤』と呼ばれた男は、度を超えた茶髪で制服をこれ以上ないほどだらしなく着ていた。
腰に付けてるチェーンをジャラジャラいわせながら近づいてくる男を、思いっきり睨みつける。
「やめてください」
男は、あたしの言葉にニヤニヤと気持ち悪く笑う。
「俺さぁ、入学してきた頃から奈緒ちゃんの事見てたんだよねー。だから今日は本当についてる。
……あー、俺絶対キスだけじゃ止まんないよ。ごめんね?」
男の言葉に、あたしは顔をしかめて小さく深呼吸する。
女の子だけど……、でも仕方ない。少し抵抗を示す気持ちを言い聞かせて、そして―――……。
両腕を押さえつけている二人の女子を地面に転がした。
「えっ……」
その様子に、萩原先輩と男が目を丸くして呆然と立ち尽くす。
地面に叩きつけられた女子も訳の分からない様子で、立ち上がってから萩原先輩の後ろに隠れた。
「あたし合気道の有段者ですよ」
睨みながら言ったあたしに、萩原先輩は驚いていた表情を笑みに変える。