その手に触れたくて

「美月、大丈夫?」


学校を休んで行った初日、廊下であった夏美があたしにそう言って心配な顔をしてきた。

何も連絡をしていなかった所為か、夏美はここぞとばかりに言っていいほど心配の表情をする。


「うん。ちょっと体調悪くてさ…、でも寝てたら治ったから。連絡しなくてゴメン」

「ならいいけどさ、美月が連絡しないのって珍しいから何かあったかと思ったじゃん」


少し安心したのか夏美はうっすら笑みを浮かべて、あたしの肩にポンっと触れた。

“何かあったかと思ったじゃん”

夏美が言った言葉に、あの過ちが重なる。


「ゴメンね…」


話を逸らそうと、あたしは謝罪の言葉を告げて、その場を離れようとした時、


「まただよ…」


夏美のうんざりとした声で、あたしの足は必然的に止まった。

動かそうとした足は廊下にピタッとくっついたように動かなくて、目線だけはしっかりと夏美を捕えている。


「…どうしたの?」


顰めた顔をする夏美に声を掛けると、夏美は顎であたしの後ろを指し深いため息を吐き出した。


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