その手に触れたくて

「帰るって…」

「帰ってゆっくり寝ろ」

「でも…」

「午前中だったら病院開いてるだろ?俺が連れて行くから」


隼人は2つの鞄を肩に掛けると、あたしの額にあったタオルをスッと取った。


「でも隼人、また帰っちゃ怒られるよ?」

「どうでもいい。っつーかお前をここで寝かすのも嫌だしよ」

「そーだよ美月。隼人に送ってもらいなよ。どーせ授業なんて聞いてないんだし、居ても居なくても一緒だよ」

「いや、そー言う問題じゃないんだけど…」

「気にすんなって」


表情で崩したあたしで分かったのか隼人は口角を上げて微笑む。


「ごめん…ね」

「全然。立てるか?」

「うん…」


コクンと頷くあたしに夏美はベッドからあたしの身体を起す。夏美に支えてもらいながらあたしは立ち上がった。


「美月、大丈夫?フラフラしない?」


表情を崩す夏美は心配そうにあたしを見る。


「うん、大丈夫。ありがとう」

「あー…夏美?」


隼人の問い掛けに夏美は首を傾げる。


「何?」

「帰るって言っといて」

「あー…分かった」


夏美が手を振る姿を見てあたしは隼人に支えてもらいながら学校を出た。








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