その手に触れたくて
その光景を見てクスクス笑うあたしに、「掴まれよ」と隼人は言って後ろを見る。
「え?」
「落ちっから」
そう言ってきた隼人はあたしの腕を掴み自分の腰へとあたしの腕を回す。
その所為で少し前屈みになったあたしの顔を隼人の背中にトン…っと当たった。
隼人の体温が一気に伝わる…
あまりの密着度にあたしはドキっとしてしまい隼人の背中から顔を離す。
ビックリしたぁ…
ってか何であたしはこんなに隼人に意識してんだろ…。
「よっしゃー!焼肉、焼肉ぅー」
颯ちゃんの原付が発進すると後ろに乗っている、あっちゃんがガッツポーズをしながら騒ぐ。
「行くぞ」
「あ、うん」
隼人の問い掛けにあたしが頷く。
「じゃあな、直司」
隼人は鼻でフッと笑い原付を発進させる。
「うわー、マジうぜぇ…」
進む間際に直司の不機嫌な声が背後から聞こえた。
「ナオ、もっと飛ばしてよ」
「バカ!だったらお前が漕げ」
その夏美と直司の会話に思わず、あたしはクスクス笑った。