お大事にしてください
目覚める2
ベッドの中で眠ったフリをしていた。どうしても、妻の言葉が気になってしかたない。そのせいで、目が冴えてしまった。どうしていいのか思い悩んでいた。
六郎は同年代の中では、比較的若く見られる。そして、会社の女性社員の中では、おしゃれな上司として通っている。彼なりのスタイルを通して、これまで生きてきた。今更、この生き方を変える事など出来ない。それは家の中でも同じだ。だからこそ、悩んでいた。
(妻は本当に眠っているのか・・・?)
聞き耳を立てると、確かに寝息が聞こえる。しかし、それは昨日までもそうだった。にも関わらず、妻は自分の行動に気がついていた。用心深く動かなければいけない。まず、ベッドから右足を出した。
聞き耳を、また立てる。
(まだ、寝息が聞こえるな。)
次に左足だ。ゆっくりと出した。ちょうど、つま先にスリッパがあたった。
(まだ、大丈夫だ。)
ふとんをめくりあげる事なく、床に滑り出すようにベッドから抜け出た。
ドアノブに手をかけ、最後の確認だ。やはり、妻は寝息を立てていた。
六郎は安心し、寝室を後にした。
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