お大事にしてください
恰幅のいい男4
健康診断を受けるため、朝から何も食べていない。さっきから腹の虫が鳴り止まない。鳴り止ませるのは簡単だ。しかし、文太は悩んでいた。
右を向いても、左を向いても飲食店だらけだ。食欲を誘う香りが文太を誘う。
(ええい、鳴り止め、腹の虫。)
医者の言う事には従わないと思ってみても、いざ店に入ろうとすると、死ぬと言われた事を思い出してしまう。それを何度繰り返しただろう。気がつくとあれだけあった飲食店はなくなり、代わりに小さな店があった。
本当に無意識だった。腹が空き過ぎて、判断力が落ちていたのだろう。躊躇する事なく、その店の中に入っていた。
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