狐面の主人


五穂は、自分から炎尾に抱き寄った。





「父様にも…母様にも…。
行く先々で私は見放され……

役に立たなければ…捨てられました……。













もう私に、生きる価値は無い。

愛される意味は無い…。



逃げ場も、救いも無く…

これからも自分は捨てられ続けるのだと…


そう思い、諦めていたとき…















貴方様が…牢獄から……私を助け出して下さったのです…。」



いつしか、五穂は無意識に、炎尾の能面に、手を添えていた。














「初めて優しさを下さったのは貴方……。



初めて居場所を下さったのは、貴方……。





そして、初めて愛を下さったのも……貴方様です……。」


「五穂…………。」




そっと、能面の紐を緩め始めた五穂。






「今まで……このように、誰かを想い、お慕い申し上げることは…ありませんでした………。


…貴方様が、どんな姿であろうと構いません…。











私は炎尾様を…












愛しております…。」





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