狐面の主人


紐の押さえも無くなり、残るは面を外すのみとなった。

五穂を見る、面妖な狐の顔に手を添え、力を込める。


だが…



「……五穂……?」



「………………。」


五穂は、一向にその手を引こうとしない。
炎尾の頼みだというのに、その面を外そうとしないのだ。



「……五穂……どうした…?」



五穂は黙る。

唇が微かに動いているが、声は聞き取れない。


「…五穂………。」



炎尾は一瞬迷ったが、ゆっくりと、五穂の手をほどいた。


「え…………?」





紐を結び直し、再びその顔を押さえつけてしまった。


< 118 / 149 >

この作品をシェア

pagetop