【短編集】時空郵便
一通目:独房の少年
真っ暗な塀の中。
満足な食事はなく。
決められた労働をこなし。罪を償う。

俺は今、刑務所の中で暮らしている。



なんでこうなった?

親に言われるがままに勉強して。

教師に言われるがまま進学し。

世間の期待に答え続けた。

なのに、なぜ?

もう一度だけ人生をやり直せたら。

もう一度昔に戻れたら。

そしたら、俺は

俺は―


「バカですねぇ。人生をやり直すことなど出来る訳がないでしょう。」

真後ろから誰かの声がして俺は後ろを振り返った。

誰もいない。

当たり前だ。ここは刑務所で俺に割り当てられた一人部屋。

自由に出入りも出来ないし、誰かが勝手に入ってこれるわけない。

「ですが。昔のあなたに手紙を出すことは出来ますよ。」

また、空耳が聞こえた。

気持ち悪いほどにリアルな声。そしてあり得ない話だった。

「昔の自分に手紙を?」

あり得ない。あり得ない。あり得ない。

とんだ幻聴だった。そう言って笑い飛ばしてやろうとした瞬間―

『パサッ。』

小部屋に用意された小さな机のうえに、何か軽い物が落ちる音がした。
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