【短編集】時空郵便
俺はビルの屋上にいた。
スーツ姿。鞄。左手には、今ではなかなかお目にかかれない便箋に綴られた手紙。
靴を脱いで柵の側に揃えてそれを置いた。
テレビドラマで幾度となく見た。
虚ろな目をした人が靴を揃えて、その上に生涯最後となるであろう手紙を添える。
柵を越えて身震いをして。
そんな人を誰かが呼び止める。
話を聞いて。
泣いて。
最後には柵の内側へと引き戻す。
そんな人間にーーー
そんな人間になりたかった。
「……なのにな」
俺は柵の外側にいた。
見下ろした街並みは、俺の存在なんてお構いなしに流れている。
今からここから男が飛び降りますよ?
人一人が命を投げ出すんですよ?
返答はない。
抱いた気持ちは
諦めが96パーセント。
そして、みっともないんだけど。
期待が4パーセント。
「……ははっ。こえぇ」
本能が警鐘を鳴らしている。
最後くらい、そのスイッチはOFFにならないものか。そうしたら何もかも投げ出して終わりにできるのに。
俺は空を見上げた。
ネオンに邪魔されてもなお輝いていた星々を見た感想なんて決まってる。
「ちっきしょう。綺麗だなぁ」
目を瞑る。そして足を支点にするように、頭を傾けた。
手すりから手を離す。
さぁ。
これで終わりだ。
「……んじゃ、ダメだぁああっ!」
スーツ姿。鞄。左手には、今ではなかなかお目にかかれない便箋に綴られた手紙。
靴を脱いで柵の側に揃えてそれを置いた。
テレビドラマで幾度となく見た。
虚ろな目をした人が靴を揃えて、その上に生涯最後となるであろう手紙を添える。
柵を越えて身震いをして。
そんな人を誰かが呼び止める。
話を聞いて。
泣いて。
最後には柵の内側へと引き戻す。
そんな人間にーーー
そんな人間になりたかった。
「……なのにな」
俺は柵の外側にいた。
見下ろした街並みは、俺の存在なんてお構いなしに流れている。
今からここから男が飛び降りますよ?
人一人が命を投げ出すんですよ?
返答はない。
抱いた気持ちは
諦めが96パーセント。
そして、みっともないんだけど。
期待が4パーセント。
「……ははっ。こえぇ」
本能が警鐘を鳴らしている。
最後くらい、そのスイッチはOFFにならないものか。そうしたら何もかも投げ出して終わりにできるのに。
俺は空を見上げた。
ネオンに邪魔されてもなお輝いていた星々を見た感想なんて決まってる。
「ちっきしょう。綺麗だなぁ」
目を瞑る。そして足を支点にするように、頭を傾けた。
手すりから手を離す。
さぁ。
これで終わりだ。
「……んじゃ、ダメだぁああっ!」