お兄ちゃんは悪魔サマ
 


「唯は本当に強いな……。俺が考えていたよりずっと、ずっと」

「先輩……」

「でもさっきも言った通り、俺は協力出来ない」

「…………はい」



私、自分の事しか考えてなかった……

先輩や尚哉くんがどう思うかなんて、少し考えれば解りそうなものなのに。




「先輩、尚哉くん、ごめんなさい。私、自分の事だけでいっぱいいっぱいになっちゃって……」

「唯はどうするつもりなんだ……?」

「1人でも逃げない。私かお兄ちゃん、どちらかが犠牲にならなきゃいけないのなら……」



その先は言葉にする事が出来なかった……






しばしの沈黙の後、尚哉くんから予想していなかった言葉が発せられた。




「……唯、俺は手伝ってやる」

「尚哉!?お前、何言って!」

「唯が死んじゃうなんて嫌だよ。でも、唯の決意は固いんだろ?」



少し困ったような表情の尚哉くん。
私はそんな彼を見てはっきりと頷いた。




「何が正しいかなんてわかんねぇ。でも、俺は……」

「尚哉が協力するなら、俺は邪魔するからな」

「兄貴……」

「俺はそんなに出来た人間じゃない。何がなんでも大切な人を失いたくないと思う人間なんだよ。それが唯の意志じゃないとしても……」






先輩が私を大切に思ってくれてる事、凄く感じた。

でも……先輩、ごめんなさい……



 
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