お兄ちゃんは悪魔サマ

*覚悟*





「風が気持ちいい……」



屋上に出てきた私は、フェンス越しに景色を見渡す。

頬をさらりと撫でる風が心地良くて、思わず伸びをする。




「死ぬって何なんだろ……。もし今、ここから飛び降りたら……」



一人言をポツリ呟いて、視線を遠くの景色から校舎の下に向ける。

高い……当たり前な事なのに、ここから落ちる事をイメージした途端に足が震えだす。


少なくとも今の私には自殺は無理そう……かな。



そして自分の残りの命を知った方がいいのか、知らない方がいいのか。
簡単に答えは出せそうになかった。




「あの、唯さん…」



突然の声に驚いて振り向くと、そこには紗香ちゃんが立っていた。

彼女は私の表情を窺うように、一歩一歩近づいてくる。




「ちょっとだけ、お話しませんか……?」

「うん、私も話してみたかった。いろいろ聞いてもいい?」

「はい!私も唯さんに聞いてみたい事があるんです」



どうやら紗香ちゃんは、尚哉くんからはかなり断片的で、曖昧にしか話を聞かされてないらしい。

生きられる道があるのに、何故死ぬという運命に身を委ねようとしているのか……




何故って言われても、そんなの理屈じゃないんだよね。

ただ、お兄ちゃんに居て欲しいだけ――



 
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