お兄ちゃんは悪魔サマ
*・。・未来へ・。・*



「いってきまーす」

「唯、今日の夕飯は?」

「あ、今日はデートだからいらない!でも、明日は私が作るから」

「はいはい。あまり遅くならないようにね」

「は~い」




ドアを開けて外に出ると、太陽が目映く光っていた。


お兄ちゃんが居なくなって5年という月日がたった今でも、ふと空を見上げてはお兄ちゃんやイグルスさんの姿を探してしまう。

見つかる訳ないって解っているのにね……



でも、決して後ろを向いてるんじゃないよ?

愛する人を失ったダメージが大きかった分、人より前に進む速度はゆっくりだったかもしれない。


それでも確実に前に進んでいる。お兄ちゃんを忘れた訳じゃないけど、大切な人も出来たよ。







大学での講義を終え、私は待ち合わせ場所のカフェへと向かう。

私の方が一足遅かったみたいで、彼は既にコーヒーカップを口に運んでいた。




「いつも早いんだから……」

「待つのは慣れてるから平気。何たって4年も待ったからな」

「もぉ……またそれを言う」




悠哉先輩はもう立派な社会人となって働いている。
基本的に平日休みの仕事なので、こうやって私の大学が終わった後に会う事が多い。

5年の間、先輩ともいろいろあった。紆余曲折を経てやっと付き合い出してから、まだ1年も経ってない。



私の中でもいろんな葛藤があった。
でも、決して先輩は無理強いしたりしなかったし、答えを急かしたりもしなかった。


そんな優しさに包まれて、私は先輩と付き合う事を決めた。



 
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