逆境があるから生きていられた
耳を疑った。てかよく意味がわからなくて。
「実は、受験の少し前、病院から電話があって。ばあちゃんのお葬式があって。Yはおばあちゃん大好きだったから、きっと勉強に手が付かなくなる。大事な時期なのに、それはおばあちゃんの本望でもないから、隠しておきたいって、親戚の皆に、お父さん、お願いしたの。私たちを恨んでもいい。でも、この気持ちをわかってあげて。」
日を聞くと、父が狂ったころだった。全ての謎が、つながってしまった。すべてのつじつまが、あった。認めざるを得ないリアルに、逃げ出したくなった。
この間まで、あんなに元気だったのに。「Yちゃん、Yちゃん」って顔見ただけで喜んでくれたのに。帰り手を振るとき見えなくなるまで手を振ってくれて。元気な頃、本当に料理が上手でいつもごちそうしてくれて。認知症になってもいつまでも思いやりを忘れない人で。凛としていて。一人で逝かせてしまった。おばあちゃんはどんな想いで最後を迎えたのだろう。どんな顔をしていたの。ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ涙が次から次から涙があふれ出て、その場にうずくまった。おかしくなりそうだった。父は、おばあちゃんに早く会いたい。と私が言うたび、どんな気分だったんだろう。父と私に当たられながら、一番近くにいた母はどれだけ辛かったろう。私はなんて自分のわがままだけで突っ走っていたんだろう。受験生がそんなに偉いのか、本当にかっこ悪い。ただのすねかじりじゃないか。ああ、これは、おばあちゃんがくれた、合格だったんだ。狂いそうだった。何が正しいかわからないけど、あの時事実を知っていれば、あの時間違いなく狂っていただろう。親戚の配慮に感謝して、しっかりしなければと思った。
母が言った。「お父さんに当たられたってだけで、お父さんが一番苦しい時期に、愛人とか被害妄想していたのは私の方かもしれない。そんな時期に何をしていたんだろう。」私も父に謝った。父は泣きながら髪をなでてくれた。父と母は、別れないことになった。おばあちゃんは、色んな大きなものを、私たちにプレゼントして逝ったんだよね。

そうして、大学、九州から、関東へ。初めて踏み入れることになった
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