逆境があるから生きていられた
「僕は、Yさんのこと本当は忘れようとした。そのほうがお互い幸せやないんかなて。今日も来るか本当に悩んでいた。でもどうしてもだめだった。」泣いているようだった。これはあの人が、電車で来たときのこと。私は苦しんでいることを知って欲しかった。この日に言って、もう会わないようにしましょう。というつもりだった。でも目の前のこの人も、苦しんでいたんだと、知ってしまった。
こうして世界がくずれた。すべての歯車は狂ってしまった。理性を失ってしまった。いってはいけないことを言った。それは一生心にしまうと誓った一言。流してはいけない涙をながしながら。

「私もずっと好きでした」と。

人はなぜ愛するのか、なぜ叶えられないことがあるのか、深い深い話を朝までしていた。どうあがいたって、結局家族には、なれない。はっきりとしていくたびに、一粒、また一粒、涙を落としては乾いていった。

毎日電話したりしているうちにある日非通知から電話が来た。奥さんからだった。「ばれてしまった。もうこの際全部言う。わかれるから。これからも会いたいんだ。」馬鹿言わないで。子供はどうするの。そんなの、私は望んでいない。罪悪感に押しつぶされて死んでしまうよ。いいから会いたいといわれ、敢えて会った。そう、一切感情を消した表情で。

とても尊敬している人に「あなたにはもう幻滅した」といった。毎日会いたい人に「連絡も取りたくない」と、電話もメールも目の前で消して拒否設定にした。すごくすごく愛している人に「ありがとうございました。もう忘れてください、私は簡単に忘れられますから」そういって、背を向けて、家へ歩いた。簡単に、終わった。・・・途中涙で全く足元が見えなくなって、私は無様にも、うずくまった。
わたしは、ワタシのとった行動をこの先もずっと許せないと思う。でも一つだけ言える。
あの時あの人をまっすぐに愛したことは決して間違いではなかったと。
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