影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
悲鳴も、呪詛もなく。
深い谷底へと消える甲斐様。
「フン」
その姿を一瞥もせず、初代は谷に背を向ける。
「さぁ百合。次はお前の…」
何か言い掛けたようだったが、私の耳には既に届かない。
右手には甲斐様より授かった苦無。
その苦無を握り締めて走り出て。
「むっ!?」
身構える初代。
その脇を走り抜け。
深い谷底へと消える甲斐様。
「フン」
その姿を一瞥もせず、初代は谷に背を向ける。
「さぁ百合。次はお前の…」
何か言い掛けたようだったが、私の耳には既に届かない。
右手には甲斐様より授かった苦無。
その苦無を握り締めて走り出て。
「むっ!?」
身構える初代。
その脇を走り抜け。