影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
顔を上げ、百合を見る。

「百合はどう思う?」

「ふふふっ」

何が可笑しいのか、百合は微笑んで見せた。

「おかしな事を訊かれるのですね。以前も申し上げた筈です」

自信たっぷりに。

正面から俺を見つめて百合は言った。

「死が分かつまで、百合は甲斐様の配下のくのいちです。甲斐様がお決めになった事ならば、百合は疑う事なくどこまでもお供致します」

「……」

その言葉に、思わず笑みを浮かべてしまう。

そうだったな…この健気さに、俺は何度も勇気付けられたものだ。

「ならば」

俺は焚き火の炎を見つめた。

「我らも集おう。新たなる伊賀頭領、服部半蔵様の名の下に」


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