影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-

百合

三河国国境付近。

その山の麓を流れる川。

この河川は三河国に流れ込み、街や村の生活用水として利用されている。

炊事や洗濯、当然飲用にも。

一部井戸を使用している場所もあるが、河川付近の集落は大抵この水を使用している。

深夜、その河川付近をうろつく影を。

「動くな」

私は背後から締め上げ、喉元に苦無を突きつけた。

そのまま、懐を探り持ち物を調べる。

出てきたのは八方手裏剣と竹筒。

「驚いた…この八方手裏剣…本当に甲賀の隠密が釣れるとは」

「別に難しい事じゃない」

私の背後…隠密装束姿の甲斐様が、頭巾の下で言った。

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