影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
できれば家康の口にする料理に一服盛るのが理想的。

だが三河国内に潜入できないとなるとそうもいかない。

そこで。

「これだ」

甲斐様は甲賀隠密の持っていた竹筒を手にした。

「三河国の人々が生活用水として使用するこの川に毒物を混入させる…あわよくば家康の口に入る事があるやもしれぬし、そこまでいかなくとも三河国の町民や農民、兵卒がこの水を口にすれば国内に多数の死者が出て、国力は激減、国内の混乱を招くだろう…その機に乗じて潜入、直接家康を暗殺すればいい」

…甲斐様はそこまで読んだ上で、伊賀忍軍を河川にも配置したのだ。

「さて」

甲斐様が甲賀隠密の腕を捻り上げる。

「ひっ捕らえた以上ただでは帰さぬ…片目片腕失う程度の拷問は覚悟してもらおうか」

彼の表情に『鬼』が宿る。

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