影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
赤々と燃える炎。

その炎を背に、俺は歩き出す。

…控えめに、しかししっかりと。

百合が後に続く。

「百合」

振り向かぬまま。

俺は彼女に告げる。

「親殺しの隠密の配下でいる必要はないぞ」

皮肉でも嫌味でもなく、本心だった。

百合は成長し、立派なくのいちとなった。

忍術だけでなく、その容姿も…。

彼女ほどの腕前ならば、どこの大名にでも可愛がられるだろう。

何も血を分けた肉親を顔色一つ変えず葬る、鬼畜の如き隠密と共にいる必要はない筈だ。

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