影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
城門前の兵卒を俺達の部隊が片付ける頃には、丸山城の各所で悲鳴と怒声が上がっていた。

既に城に潜入した別働部隊が行動を開始しているらしい。

「……」

俺は騒ぎに乗じて、配下の下忍に視線のみで指示を出す。

部下達は無言で頷き、その場に倒れる屍から具足を、槍を剥ぎ取り始めた。

そしてそれを身につける。

俺も同様の行為に及んだ。

敵の装備を奪い、それを身につけて城内に突入する。

無論目的は同士討ちを誘う為だ。

同じ具足、同じ姿をした兵卒にさえ、敵兵が紛れているかもしれない。

背中を預ける筈の仲間にさえ、裏切り者がいるかもしれない。

疑心暗鬼というのは、戦場では最も恐ろしい。

ただでさえ平時での精神状態を維持できない戦場だ。

疑念は疑念を呼び、敵を、仲間を、最後には己の判断さえも信用できなくなる。

そんな精神状態で勝ち戦など望めない。

自軍が一万いようと十万いようと、信頼と統率のない軍は烏合の衆に過ぎないのだ。

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