影を往く者、闇に逝く者-戦国隠密伝-
事は万事成功したかに見えた。

俺はその功績を称えられたものの、あくまで任務は極秘。

公にされる事なく、また初代に知られる事もなく、下忍のままでその後二年間修行を続けた。

ようやく中忍に昇級し、小頭の任を与えられたのが十五の時。

元服と同時に、初代も俺に『二代目下山甲斐』の跡目を譲ってくれた。

全ては順調だった。

恐らくは、初代が信玄暗殺の件を知る事がなければ、天正伊賀の乱も起きる事はなかっただろう。

…初代がいつ、その事を知ったのかは知らない。

だが、現実に初代は知ってしまったのだ。

父が子に知らぬ間に追い抜かれてしまった。

そんな耐え難い屈辱を。

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