イチ*コイ

―暴走クライシス




 朝、学校に行くと臨時の保健医の挨拶があるとか言われた。

 そういやぁ保健室の先生、もう臨月だっけか。

 けど10月から代理って、何か微妙だな…。

 ――まあ、興味なんてねぇけど。

 体育館に向かう美華を見た。

 整列したら、隣になる。


「斗真、早く行こうぜー」

「おお…」


 立ってから廉を見つめた。

 あれから廉は何も言ってこない。

 気にしなきゃいいんだけどな…。







 整列してから少し経つと、若い男が壇上に上がった。


「臨時の保健医として来ました、徳永 仁です。
 よろしく」

「かっこいー!」

「やばぁ…狙っちゃおうかなぁ…」

「アンタじゃ無理ってー」


 女子の甲高い声が響く。

 確かに男の俺から見てもカッコいいとは思う…が。

 ちら…と隣を見ると、徳永を凝視している美華。

 まさか…こいつまで?

 いやいや…美華は男とか興味ないタイプだろ…。


「オイ」


―ビクッ

 明らかに飛び上がった肩。

 驚いただけじゃない…。

 そんなのわかってる。



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